商流トラブルを防ぐ2段構えの考え方

商流トラブル(飛ばし・中抜き)は、商流が不明なまま話を進めないことと、一度逸脱した相手と二度目の接点を持たないことの2つで防げます。

商流トラブルは注意力の問題ではなく、商流が曖昧な状態を可視化する仕組みと、トラブルのあった相手を除外する仕組みの2段構えで防ぐものです。

SES業界は多重下請けの構造を持ち、ひとつの案件が複数の会社を経由して流れていきます。

この記事では、商流トラブルがなぜ起きるのかを構造から整理し、営業担当の方が実務でどう備えられるかを解説します。

商流トラブルとは何か|飛ばしと中抜きの違い

商流トラブルは、事前に合意していた商流の条件と、実際の取引の形が食い違うことで起きます。

「飛ばし」と「中抜き」はその代表例で、どちらも商流の前提が崩れるという点で共通しています。

SESの案件は「エンドユーザー→元請け→1次請け→2次請け→3次請け」のように段階を経て流れることが多く、この段階の並びが取引条件そのものになっています。

だからこそ、段階が想定と違うだけで、条件も責任範囲も変わってしまいます。

飛ばし|間の段階を越えて話が進む

飛ばしは、本来間に入るはずだった会社を越えて、直接やり取りや契約が進んでしまう状態を指します。

たとえば、2次請けを経由して紹介された人材について、いつの間にか元請けと直接話が進んでいるようなケースです。

想定していた商流の外側で取引が成立してしまうため、間を飛ばされた会社との関係が一気に悪化しかねません。

意図的でなくても、担当者同士が良かれと思って直接連絡を取り合った結果として起きることもあります。

中抜き|想定より多くの会社が介在する

中抜きは、商流の途中で不透明なマージンが上乗せされたり、想定より多くの中間業者が介在してしまう状態を指します。

聞いていた単価と、実際に自社へ提示される単価の差が説明できないときに疑われるのがこの形です。

段階が増えるほど1社あたりの取り分は薄くなり、提示できる条件が想定より不利になるという影響が出ます。

飛ばしが「段階が抜ける」ずれだとすれば、中抜きは「段階が増える」ずれだと整理できます。

多重下請け構造がトラブルの温床になりやすい理由

多重下請け構造がトラブルを生みやすいのは、自分から見えるのが隣接する1社だけで、その先が見えないためです。

営業担当の方が直接やり取りするのは、案件を持ってきた会社か、人材を紹介してきた会社の担当者だけです。

その相手がさらに誰から情報を受け取っているのかは、本人が説明しない限り分かりません。

段階が増えるほど相手の立ち位置が見えにくくなる

商流の段階が増えるほど、目の前の相手が全体のどこにいるのかを把握するのが難しくなります。

同じ「1社先まで可」という言葉でも、相手がどの段階にいるかによって、実際に許容される商流の範囲は変わります。

相手の立ち位置を取り違えたまま条件を合意すると、後から前提そのものがずれていたと判明することになります。

同じ案件が別ルートで戻ってくることがある

多重下請けの構造では、自社が一度流した案件や人材の情報が、別の会社を経由して戻ってくることがあります。

戻ってきた時点では表現が変わっていることも多く、元は自社発の情報だと気づかないまま検討を進めてしまう場合があります。

気づかないうちに自社が介在すべきでない位置に入ってしまうという形で、商流の逸脱が生まれます。

メールのやり取りだけでは商流を見極めにくい

商流トラブルの根本にあるのは、メールのやり取りだけでは相手の商流段階を確かめきれないという情報の非対称です。

案件・人材の情報は日々大量のメールで届きますが、そこに書かれているのは条件と経歴が中心です。

誰を経由してその情報が届いたのかまでは、本文からは読み取れないことがほとんどです。

商流の条件が本文に書かれないまま進む

商流の条件は、そもそもメールに明記されないまま話が進むことがあります。

特に人材メールでは、スキルや稼働時期が主役になり、商流の条件は書かれずに届く傾向があります。

書かれていない以上、受け取った側は経験と勘で商流を推測するしかなくなり、そこに認識のずれが入り込みます。

表記が曖昧なため解釈が人によってずれる

商流に関する表記は、書かれていたとしても解釈の幅が残ります。

「貴社まで」「1社先可」「商流不問」といった表現は、書き手と読み手で想定している基準が同じとは限りません。

同じメールを読んでも担当者によって違う商流を思い描いてしまうと、その時点でトラブルの芽が生まれています。

商流や単価の読み取り方を、経験の浅い営業担当の方にどう引き継ぐかは別の記事で扱っています。

新人営業が商流・単価をすぐ覚えられない問題への対処法|SES営業の属人化

商流の食い違いが実務に与える影響

商流の食い違いは、単なる条件の行き違いでは終わらず、取引関係そのものに影響します。

営業担当の方にとって痛いのは、失注そのものよりも、その後の関係が続かなくなることです。

  • 間を飛ばされた側との信頼関係が損なわれる
  • 長く付き合ってきた既存取引先との関係が悪化する
  • 合意した条件と実態が違うことで契約上の問題になる

気づいた時点では後戻りしにくい

商流の逸脱は、気づいたときにはすでに引き返しにくい段階まで進んでいることが多くあります。

一度面談が設定され、稼働開始日まで話が進んだ状態で商流の前提を巻き戻すのは、現実的にはかなり難しくなります。

だからこそ対策は、発覚後の対応ではなく、着手前に食い違いを見つける方向に置く必要があります。

商流が不明な段階で無理に進めないという第一の防御

第一の防御は、商流が明確でない案件・人材を「不明」として可視化し、その状態のまま話を進めないことです。

Dot Linkはメール本文に書かれている商流情報を読み取り、記載が見当たらない場合は推測で埋めず「不明」として区分します。

商流が曖昧なまま流れていく状態を、着手前に目に見える形にするのがこの仕組みの役割です。

書かれていない商流を推測で埋めない

商流トラブルの対策として重要なのは、根拠のない値で商流を埋めないことです。

書かれていない商流を「たぶん貴社までだろう」と決めつけて処理すると、実際には多段階だった案件を誤った前提で扱うことになります。

推測しないこと自体が防御になるという考え方が、この設計の土台にあります。

不明とわかっていれば確認の一手を入れられる

商流が「不明」と明示されていれば、営業担当の方はその案件だけに確認の一手を入れられます。

すべてのメールを疑って読み直す運用ではなく、確認が必要な対象だけが最初から分かっている運用に変わります。

商流の判定と「不明」の扱いについては、姉妹記事で詳しく解説しています。

商流・単価をメールから自動判定する方法|見落としを防ぐには

トラブルのあった相手と接点を持たない第二の防御

第二の防御は、商流の逸脱があった相手に、そもそも自社の情報が渡らない状態を作ることです。

商流が不明な段階で止められても、同じ相手と何度もやり取りしていれば、いつかは似た問題が再発します。

Dot Linkのブロックリスト機能では、相手のメールアドレスまたはドメインを登録すると、その相手には自社の案件・人材情報が表示されなくなります。

登録は双方向に効くため、こちらから相手が見えなくなると同時に、相手側からも自社の情報が見えなくなります。

注意して避けるのではなく、接点そのものを仕組みで断つことが、再発防止としては確実です。

ブロックリストの登録単位や適用範囲は、姉妹記事で詳しく整理しています。

案件・人材情報が競合に漏れない設計とは|ブロックリストの仕組み

2段構えで商流トラブルを防ぐ実務の流れ

2つの防御は、受信から提案までの流れに沿って順番に効かせると実務に馴染みます。

商流の可視化が着手前の判断を支え、ブロックリストが同じ相手との再発を止める、という役割分担です。

受信時点で商流の記載有無を切り分ける

最初の工程は、届いた案件・人材情報を、商流が明記されているものと「不明」なものに分けることです。

この切り分けができていれば、そのまま検討を進めてよい案件と、確認が要る案件を最初から区別できます。

不明な相手には確認してから提案する

商流が「不明」の案件・人材については、提案や面談調整に入る前に、経由している会社と条件を相手に確認します。

ここで一手を惜しまないことが、後から巻き戻せない食い違いを防ぐ最も効果的な工程です。

確認しても商流がはっきりしない場合は、その段階で無理に進めないという判断も選べます。

逸脱があった相手は登録して再発を止める

実際に飛ばしや中抜きが疑われる動きがあった相手は、ブロックリストに登録して以後の接点を断ちます。

登録は既存の候補にも遡って効くため、その相手に見えていた情報もその時点で非表示にできます。

同じ相手との間で同じ問題を繰り返さないという状態を、記憶や申し送りではなく設定として残せます。

商流の逸脱は注意力ではなく運用で防ぐ

商流トラブルは、担当者が気をつけることで防ぐものではなく、曖昧さが残ったまま前に進まない運用で防ぐものです。

多重下請けの構造がある限り、目の前の相手の立ち位置が見えにくいという条件は変わりません。

その前提のうえで、商流が不明なら止まるという運用と、問題のあった相手とは接点を持たないという設定を組み合わせることが、現実的な備えになります。

商流が曖昧なまま進む案件を減らしたい営業担当の方は、まず受信メールを転送して、商流の判定結果を確かめてみてください。

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よくある質問

飛ばしや中抜きは意図的でなくても起きますか

起きます。

担当者同士が効率を考えて直接連絡を取り合った結果として、間に入るはずだった会社が事実上飛ばされてしまうことがあります。

中抜きについても、経由している会社の数を双方が正確に把握していないまま話が進み、結果として想定より多くの段階が挟まっていたと後から判明する形があります。

悪意の有無ではなく、商流の前提が共有されていないことが原因になるため、対策も注意喚起ではなく確認の仕組みに置くのが有効です。

商流が不明な案件は扱わないほうがよいですか

扱わないほうがよいということではなく、確認してから進めるべき対象だという整理になります。

商流がメールに書かれていないのは珍しいことではなく、特に人材情報では条件よりスキルや稼働時期が主役になるためです。

不明であること自体は問題ではなく、不明だと気づかないまま提案まで進んでしまうことが問題になります。

商流が「不明」と明示されていれば、その案件にだけ確認を入れるという運用が取れます。

ブロックリストは商流トラブルの対策としても使えますか

使えます。

ブロックリストはもともと競合や情報を知られたくない取引先を除外する機能ですが、商流の逸脱があった相手を登録する用途でも同じように機能します。

登録した相手には自社の案件・人材情報が表示されなくなり、その効果は双方向かつ既存の候補にも遡って適用されます。

同じ相手との再発を、担当者の記憶ではなく設定として止められる点が、商流トラブル対策としての価値になります。

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