SES商流の用語は関係図で読み解く
SES商流の用語は、誰がエンド企業と直接契約し、自社は誰から案件を受け、エンジニアはどの会社に所属するかを関係図で確認します。
営業担当の方が見るべきなのは、用語の暗記ではなく関係の位置です。
呼称から位置を推測せず、契約関係と所属を一本ずつ確かめると、案件メールの商流条件を読み違えにくくなります。
この記事では、エンド、元請け、一次請け、二次請けなどの呼称を一つの関係図に置き、商流制限や商流調整を提案前の確認質問へ変える方法を解説します。
エンドから所属会社までを図解する
商流は、エンド企業から案件情報がどの会社を経由し、どの所属のエンジニアまで届くかを並べると把握しやすくなります。
次の図は、元請けと一次請けを別の段階として扱う場合の一例です。
エンド企業
↓ 発注・契約関係の一例
元請け
↓
一次請け
↓
二次請け
↓
所属会社
↓ 雇用・委託などの関係
エンジニア
この並びは固定の定義ではありません。
会社によっては「元請け」と「一次請け」を同じ会社の呼称として使い、エンド企業の直下を一次請け、その次を二次請けと数えます。
別の会社では、エンド企業との直接契約会社を元請けと呼び、その直下を一次請けと数えます。
段数だけを聞いても、数え始める位置が違えば同じ商流にはなりません。
元請けと一次請けの数え方
元請けは一般に、ある発注者から直接仕事を請ける会社を指す場面で使われます。
ただしSES営業のメールでは、エンド企業と直接契約する会社を元請けと呼ぶ場合も、一次請けと呼ぶ場合もあります。
そのため「元請け案件」「一次請け案件」という一語だけで商流の浅さを決めず、直接契約の相手を確認します。
二次請け以降の数え方
二次請け以降も、一次請けをどこに置くかによって位置がずれます。
「二次請けです」と伝えられたら、エンド企業から二段目なのか、元請けの下にいる二段目なのかを図にして確かめます。
段数は相手の説明を転記するだけでなく、会社の並びと組み合わせて記録することが重要です。
商流用語は会社ごとに意味がずれる
同じ用語でも意味がずれるため、メールの単語を社内の定義へ即座に置き換えるのは危険です。
用語と一緒に「誰から見た呼称か」を記録すると、後から別の担当者が見ても解釈を再現しやすくなります。
| 用語 | よくある読み方 | 確認すること |
|---|---|---|
| エンド | システムやサービスを利用または発注する側の企業 | 今回の契約関係で誰をエンドと呼んでいるか |
| 元請け | エンド企業と直接契約する会社 | 一次請けと同義か別段階か |
| 一次請け | 数え始めから最初の受注会社 | 数え始めがエンド企業か元請けか |
| 二次請け | 一次請けの次に案件を受ける会社 | 上位会社と自社の間に別会社がないか |
| 所属 | エンジニアが雇用や委託などの関係を持つ会社 | 契約形態と提案可能な所属範囲 |
| 商流制限 | 提案可能な会社数や所属などの条件 | 起点と終点と対象となる契約関係 |
| 商流調整 | 商流に関する調整行為を示す実務表現 | 誰が何をどの状態へ変えるのか |
| 客先の客先 | 自社の相手から見た次の取引先 | エンド企業か中間会社か |
エンドという言葉の基準
エンドは最終的な利用企業を指す場面が多い一方で、メールの書き手が契約上の発注者をエンドと呼んでいる場合もあります。
「エンド直」と書かれていても、誰と誰が直接契約するのかが示されていなければ、営業判断に必要な情報はそろっていません。
会社名を聞けない段階でも「元請けはエンド企業と直接契約していますか」と関係だけを確認できます。
所属は商流の段数ではない
所属は、エンジニアがどの会社と雇用や委託などの関係を持つかを示す情報です。
「貴社所属まで」という条件は、商流の段数だけでなく、提案する人材と貴社の関係を問題にしている可能性があります。
ここでいう所属に正社員、契約社員、個人事業主などのどこまでを含めるかは、送信元へ確認します。
所属と契約相手は別の情報です。
同じ欄にまとめないことが、関係図を崩さない基本です。
客先の客先は相対的な表現
「客先の客先」は、自社が取引する相手から見た次の取引先を表す相対的な言い方です。
その会社がエンド企業とは限らず、さらに上位の会社が存在する場合もあります。
正式な社名を開示できない状況でも、元請け、一次請け、エンド企業のどの位置かを質問し、確認後は役割名で記録します。
公的資料から商流を捉える
公的資料が示すのは、ソフトウェア業に多層の取引関係が存在し、契約内容と実態を明確にする必要があるという点です。
用語の呼び方を一律に固定する根拠としてではなく、会社間の関係を確認する必要性の根拠として読みます。
公正取引委員会が示す多重下請構造
公正取引委員会の「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」は、エンドユーザー、元請、中間下請、最終下請という図で多重下請構造型のサプライチェーンを示しています。
同報告書は、エンドユーザー、元請、下請間の契約内容が必ずしも明確でないことや、情報伝達の混乱が生じ得ることも扱っています。
公的資料でも関係は段階として示されており、メール上の略称だけで契約内容まで確定できるわけではありません。
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」 — ソフトウェア業の多重下請構造と取引上の課題をまとめた一次資料です。
既存記事では、多重下請構造が深くなる仕組みと営業実務への影響を詳しく整理しています。
SES多重下請け構造とは|商流が深くなるほど営業実務に何が起きるか
厚生労働省が示す契約形式と実態
厚生労働省は、労働者派遣を派遣先の指揮命令を受けて働く仕組みとして説明し、派遣と請負の区分は契約形式ではなく実態に即して判断されると案内しています。
したがって、案件メールに「準委任」「請負」「派遣」と書かれていても、その名称だけで誰がエンジニアへ業務上の指示を出すかを決めつけられません。
営業担当の方は、商流の段数とは別に、契約内容と実際の業務運用を社内の担当者と確認する必要があります。
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」 — 派遣と請負の区分を契約形式ではなく実態で判断する考え方を確認できます。
商流制限と商流調整を読み分ける
商流制限は提案できる範囲の条件として読み、商流調整は調整の内容と結果を確認すべき表現として読みます。
どちらも一語だけでは起点、対象、許容される状態が分かりません。
商流制限は起点と終点を確認する
「一社先まで」「貴社まで」「元請けまで」といった商流制限は、誰を起点に会社数を数えるかで意味が変わります。
「貴社一社先まで可」であれば、メール受信会社から一社先の所属人材を指すのか、契約会社を一社追加できるのかを確認します。
「どの会社を起点に、どの所属まで提案できますか」と聞くと、段数と所属を分けて回答してもらえます。
メール内に現れる商流表記の違いは、次の記事で詳しく扱っています。
商流調整は調整後の形を確認する
商流調整は、法令で一つの意味に定められた用語としてではなく、案件ごとの実務表現として扱います。
介在会社を減らす相談、提案可能な所属範囲の確認、既存の関係会社との合意など、書き手が想定する作業は同じとは限りません。
「商流調整可」だけを見て提案可能と判断せず、誰と誰の間をどう調整し、調整後に自社が誰と契約するのかを確認します。
調整できるという表現は、調整済みや提案承認済みを意味しません。
契約相手と指揮命令を商流から切り離す
商流の呼称、契約相手、エンジニアの所属、業務上の指示系統は別々に確認します。
関係図が同じに見えても、契約形態や実際の業務運用まで同じとは限りません。
| 確認対象 | 確認する質問 | 混同すると起きること |
|---|---|---|
| 商流の位置 | 自社の上位と下位には誰がいるか | 一社先の数え方を取り違える |
| 契約相手 | 自社は誰と契約する予定か | メール送信元と契約先を同一視する |
| 所属 | エンジニアは誰と雇用や委託などの関係を持つか | 貴社所属の範囲を誤読する |
| 指示系統 | 実際の業務では誰がどの指示を出す設計か | 契約名だけで運用を判断する |
契約相手は会社間で確認する
案件メールの送信元が、そのまま自社の契約相手になるとは限りません。
情報共有だけを担当する会社や担当者がいる可能性もあるため、提案前または取引開始前の適切な段階で契約予定先を確かめます。
商流図には「情報を受け取った相手」と「契約予定先」を別の項目として残します。
指揮命令は実際の運用で確認する
指揮命令は、元請けや一次請けという商流の呼称から自動的に決まる情報ではありません。
契約書の名称だけで判断せず、誰が作業の割り当てや進め方に関する指示を出す設計なのかを実態に沿って確認します。
判断に迷う場合は営業担当だけで結論を出さず、契約や労務を担当する社内の確認先へつなぎます。
案件メールの商流表記を読み解く
案件メールは、書かれている事実と追加確認が必要な項目を分けて読むと、提案前の質問を作れます。
次のメールは読み方を示すための架空例であり、実在する案件や契約条件を示すものではありません。
件名:【案件】業務システム開発支援
■商流
エンド企業 → 元請け → 送信元
■商流制限
貴社所属まで
■商流調整
応相談
■契約相手
送信元を予定
■業務上の指示系統
[確認中]
メールに書かれた内容は確定情報と未確定情報へ分けると、推測を混ぜずに確認できます。
メールから読み取れること
この例からは、書き手がエンド企業、元請け、送信元の順で商流を認識していることが読み取れます。
自社の契約相手は送信元を予定し、提案対象を「貴社所属まで」と表現していることも分かります。
ここまではメール本文に明記された事実として扱えます。
メールだけでは決められないこと
元請けがエンド企業と直接契約しているか、「貴社所属」にどの契約形態を含むかは、この例だけでは確定できません。
「商流調整」が何を調整できるという意味か、調整前なのか調整済みなのかも分かりません。
業務上の指示系統は確認中と明記されているため、過去の似た案件から推測せず回答を待ちます。
案件メールを送る側の項目整理と未確定条件の書き方は、次の記事で確認できます。
SES案件メールの書き方|商流・単価・精算幅を伝えるテンプレート
提案前の確認質問をテンプレート化する
提案前は、用語の意味、会社の並び、所属範囲、契約相手、実際の業務運用を質問で確定します。
確認内容を毎回同じ順番で聞くと、担当者による抜けを減らせます。
用語と会社の位置を確認する質問
- この案件でいうエンド企業は、最終的な利用企業と契約上の発注者のどちらを指しますか。
- 元請けはエンド企業と直接契約する会社ですか。
- 一次請けは元請けと同じ会社を指しますか。それとも元請けの直下を指しますか。
- 「客先の客先」は、商流図のどの位置にある会社ですか。
制限と契約関係を確認する質問
- 商流制限は、どの会社を起点にどの所属までを対象としますか。
- 「貴社所属」には、どの契約形態の人材を含みますか。
- 商流調整では、誰と誰の間をどの状態へ変更する想定ですか。
- 調整後に自社が契約する相手はどの会社ですか。
- 業務上の指示系統は、契約内容と実際の運用でどのように定める予定ですか。
確認質問は相手の用語を正すためではなく、双方の関係図を一致させるために使います。
商流の食い違いが飛ばしや中抜きなどの問題につながる構造と、確認後の管理方法は次の記事で整理しています。
商流の確認結果を営業記録へ残す
確認結果は用語だけでなく、確認日、回答者、会社の並び、契約予定先、所属範囲を一緒に残します。
後から条件が変わった場合も、何が更新されたかを判断できる形にします。
| 記録項目 | 残す内容 |
|---|---|
| 確認日 | 相手へ確認して回答を得た日 |
| 呼称の基準 | 元請けと一次請けを同義で使うか |
| 会社の並び | エンド企業から自社と所属会社までの順序 |
| 商流制限 | 起点と許容される所属範囲 |
| 商流調整 | 調整対象と現在の状態 |
| 契約予定先 | 自社が契約する予定の会社 |
| 指示系統 | 社内確認を経た実際の業務運用 |
| 未確定項目 | 回答待ちの内容と次の確認先 |
受信メールの表記は会社ごとに異なるため、すべての取引先へ同じ用語を求める方法には限界があります。
Dot Linkは、受信した案件・人材メールから商流、単価、スキルなどを構造化して扱います。
用語の揺れを受信後に整理しつつ、確定できない内容は営業担当の方が原文と確認結果を見て判断するという役割分担が実務に合います。
商流用語は名称より関係を確認する
エンド、元請け、一次請け、二次請けという名称は、関係図を作るための手掛かりであり、名称だけで提案可否や契約内容を確定するものではありません。
誰が誰と契約し、どの所属まで提案でき、実際の業務で誰が指示するかを別々に確認することが重要です。
まずは受信した案件メールを一つ選び、会社の並び、商流制限、所属、契約予定先、未確定項目を書き出してください。
メールごとに異なる商流表記を整理し、案件と人材の情報を同じ項目で確認したい場合は、Dot Linkで受信メールの構造化を試せます。
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SES商流で迷いやすい相対表現と未確定条件について、提案前の確認方法を答えます。
客先の客先は何と呼びますか?
「客先の客先」だけで正式な呼称は決まりません。
自社の取引相手から見た次の取引先を指す相対表現なので、その会社がエンド企業の場合も、中間の受注会社である場合も考えられます。
まず「客先の客先はエンド企業ですか」「元請けや一次請けのどの位置ですか」と確認し、回答後はエンド企業、元請け、一次請けなど相手が示した役割と会社の並びを記録します。
呼び方を先に決めるのではなく、誰と誰が直接契約しているかを確認してから役割名を付けると、別の営業担当へ引き継いでも解釈がずれにくくなります。
エンド直案件なら商流確認は不要ですか?
不要ではありません。
「エンド直」が、メール送信元とエンド企業の直接契約を指すのか、自社とエンド企業の直接契約を指すのかは書き手の視点によって変わり得ます。
また、エンジニアの所属条件、自社の契約予定先、契約形態、業務上の指示系統は「エンド直」という表現だけでは確定しません。
エンド企業と直接契約する会社、提案可能な所属範囲、自社の契約相手を一度確認し、その回答を関係図に残してください。
短い呼称を契約内容全体の説明として扱わないことが大切です。
商流が不明な案件は提案できませんか?
直ちに提案不可と決める必要はありませんが、不明なまま提案を進めない運用が安全です。
相手へ元請けと一次請けの位置、商流制限の起点、許容される所属、自社の契約予定先を質問し、提案条件を確定してから判断します。
相手が会社名を開示できない場合でも、エンド企業から自社までに何社が介在するか、どの会社と直接契約するかという関係は確認できます。
回答が得られない項目は推測で埋めず、不明のまま記録し、社内の判断基準に沿って保留または見送りを選びます。
参照リンク
本文では、ソフトウェア業の取引構造と派遣・請負の区分について、次の公式一次情報を確認しました。
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」 — ソフトウェア業の多重下請構造と契約関係の課題を確認した一次資料です。
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」 — 派遣と請負の区分および契約形式と実態の考え方を確認した公式ページです。
