SES営業の見落としコストは単価ではなく期待粗利で試算する

SES営業で案件を1件見落としたときの影響は、その案件の月額単価をそのまま損失額として数えません。

見落とし案件数に、自社の成約率・月額単価・粗利率・平均稼働月数を掛けた期待粗利影響として試算します。

見落としの影響は「見落とし件数 × 成約率 × 月額単価 × 粗利率 × 稼働月数」で試算します。受信案件の月額単価は中央値72.5万円でした(2026年3月17日〜8月21日、有効N=22,507件)。

単価をそのまま損失と断定すると影響を大きく見積もりすぎ、逆にゼロと扱うと見落としを軽視します。

その中間を、自社の実績値を入れた期待値として置くのがこの記事の狙いです。

見落とし1件を単価イコール損失と数える危うさ

見落とした案件の月額単価をそのまま損失額として扱うと、実態より大きな金額を損失と錯覚します。

理由は単純で、見落とした案件が必ず成約していたとは言えないからです。

SES営業では、届いた案件のすべてに人材を当てられるわけではなく、商流・単価・スキルが合って初めて提案に進みます。

その提案が通って初めて成約になります。

つまり、見落とした案件の単価は「成約したら動いていたはずの金額の規模」であって、確定した実損ではありません。

見落とし単価の合計を損失総額として社内に共有すると、数字が独り歩きしてしまいます。

過大な損失額は、かえって現場の納得感を失わせ、改善の説得力を弱めます。

契約金額規模と機会金額と実損を分けて捉える

見落としコストを扱うときは、契約金額規模・機会金額・実損の3つを混ぜないことが出発点です。

この3つは指しているものが違い、区別しないまま合算すると損失額が実態から離れます。

契約金額規模とは何を指すか

契約金額規模は、その案件が成約したときに動く月額単価の大きさを指します。

見落とした案件の単価そのものであり、成約したかどうかとは無関係の「案件の器の大きさ」です。

規模が大きい案件を見落とすほど影響が大きくなりうる、という当たり比較には使えますが、これ単体では損失額になりません。

機会金額は成約前提の仮の額にすぎない

機会金額は「もし成約していたら得られていた金額」で、成約を前提に置いた仮の額です。

月額単価に稼働月数を掛けると1案件あたりの機会金額の規模は出せますが、これも「決まっていれば」という条件付きの数字です。

機会金額は影響の上限を眺めるには役立ちますが、そのまま実損として報告してはいけません。

実損は成約率を通した期待値でしか近似できない

実損は、見落とさなければ得られていたはずの粗利のうち、実際に失われた分を指します。

ところが成約していない案件が本当に成約したかは確かめられないため、実損は「成約率を掛けた期待値」としてしか近似できません。

実損は確定値ではなく期待値である、という前提を崩さないことが、試算を信頼できるものにします。

自社の値で見落としコストを試算する計算式

見落としコストは、次の掛け算に自社の実績値を入れて試算します。

見落としによる期待粗利影響 = 見落とし案件数 × 通常の成約率 × 月額単価 × 自社粗利率 × 平均稼働月数

この式は、単価という「規模」を、成約率と粗利率という「実際に手元に残る割合」で割り引いて期待値に変換しています。

期待粗利影響を出す掛け算の組み立て

まず見落とし案件数を置き、そこに通常の成約率を掛けて「成約したはずの件数」に近づけます。

次に月額単価と平均稼働月数を掛けて1案件あたりの契約金額規模を出し、自社粗利率を掛けて手元に残る粗利に落とします。

こうして得た金額は、確定した損失ではなく、見落としをなくしたときに期待できる粗利の増分として読みます。

成約率と粗利率と稼働月数は自社実績から取る

成約率・粗利率・平均稼働月数は会社ごとに大きく異なるため、仮の数値を入れると試算全体が崩れます。

成約率は過去の提案件数と成約件数から、粗利率は自社の原価構造から、稼働月数は過去案件の平均契約期間から取ります。

これらを埋められないうちは、後述の月額単価分布のような外部の目安で単価だけを補い、成約率と粗利率は「自社の実績が入るまで空欄」として扱うのが誠実です。

受信案件の月額単価分布を試算の起点にする

試算の月額単価には、自社の受注実績があればそれを使い、無ければ受信している案件情報の分布を目安にします。

Dot Linkが受信した案件情報を集計すると、月額単価にははっきりした中心とばらつきがあります。

有効案件22,507件の月額単価中央値は725,000円

Dot Linkが2026年3月17日〜8月21日に受信した案件情報は25,668件でした。

このうち、単価の正規化異常を除くため月額単価を10万円以上300万円以下に限定した有効案件は22,507件で、有効率は87.7%です。

有効案件の月額単価中央値は725,000円でした。

これは契約成立額やDot Linkの成果ではなく、受信した案件情報に記載された月額単価の分布である点に注意してください。

中央値だけでなく分位点で単価の幅を見る

試算の単価を1点に固定すると、案件の幅を無視した楽観・悲観のどちらかに寄ります。

月額単価の分位点は、25パーセンタイルが600,000円、75パーセンタイルが900,000円、90パーセンタイルが1,050,000円でした。

高め・中央・低めの3通りで試算を回すと、見落としコストが「およそどのくらいの幅に収まるか」を自社の実績値と突き合わせて確かめられます。

見落としが起きうる母数をどう見積もるか

見落としコストの試算では、見落とし案件数を実測に近い形で置くことがもう一つの鍵になります。

ここで役立つのが、1通に複数の案件・人材情報が混在するメールの存在です。

複数案件メールが見落としの構造的な母数になる

別の集計では、2026年3月17日〜7月21日にメール本文を抽出した48,601件のうち、1通に複数の案件・人材を含むメールが1,303件あり、全体の2.7%でした。

1通あたりの内訳件数は最大100件、5件以上を含むメールも437件確認されています。

これらがすべて実際に見落とされたわけではなく、あくまで「本文の後半に埋もれて見落としが起きうる構造」の母数として扱います。

複数案件メールがなぜ見落としを生むのかは、こちらで詳しく整理しています。

BPメールが埋もれて案件を見逃す原因と防ぎ方

2つの集計を掛け合わせて総損失にしない

ここで扱った月額単価の集計と、複数案件メールの集計は、母集団も期間も異なります。

単価は25,668件の案件情報(3〜8月)、複数案件は48,601件のメール(3〜7月)が母数です。

この2つを単純に掛け合わせて「総損失額」を作るのは誤りで、片方を単価の目安、もう片方を見落としが起きうる母数の手がかりとして、別々に使うのが正しい向き合い方です。

損失額を断定できないことをそのまま信頼性にする

見落としコストは、正確な単一の金額としては断定できません。

これは試算が甘いからではなく、成約していない案件の成否を事後的にも確定できないという構造から来ています。

だからこそ、断定を避けて幅で示すことが、かえって数字の信頼性を高めます。

社内で共有するときは「単価合計はいくら」ではなく、「自社の成約率・粗利率・稼働月数を入れると期待粗利影響はこの幅」という形にします。

過大でも過小でもない幅を提示できると、見落とし対策への投資判断が現実的な土俵に乗ります。

断定しない試算のほうが、断定する試算より現場を動かします。

見落としを試算より先に減らす仕組み

試算で影響の幅を掴んだら、次はその母数である見落とし件数そのものを減らすほうが効果的です。

見落としは注意力ではなく、メールを1件ずつ構造化して確認漏れを可視化する仕組みで減らせます。

Dot Linkは、案件・人材メールをses@dot-link.jpに転送するだけで、AIが本文を解析して1件ずつ構造化します。

1通に複数案件が混在していても分解して抽出するため、本文の後半に埋もれた案件を手作業で読み飛ばすリスクを構造的に下げられます。

メール転送だけで手入力をなくす流れは、こちらで解説しています。

メール転送だけで手入力をゼロにするSES営業の自動化

構造化された案件・人材データは、そのまま二段階のマッチング候補生成につながります。

AIマッチングの二段階フィルタの仕組み

見落としコストの試算で影響の大きさが見えたら、まずは実際の受信メールで見落としが減るかを試してみてください。

Dot Linkにメールを転送して見落としを減らす

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よくある質問

見落とし案件数はどうやって把握しますか

正確な見落とし件数は、見ていない案件である以上、直接は数えられません。

近似する方法の1つが、1通に複数案件が混在するメールの内訳件数と、本文の後半をどこまで確認できているかから、埋もれている件数の規模を見積もる方法です。

Dot Linkのように受信メールを1件ずつ構造化する仕組みを使うと、確認漏れが「未確認の抽出データ」として残るため、見落とし件数の把握が手作業の目視より現実的になります。

まずは自社の受信量と複数案件メールの割合から、母数の桁を掴むところから始めます。

成約率が分からない場合はどう試算しますか

成約率が未整備の場合は、仮の数値を1つ置いて断定するのではなく、複数の値で試算を回して幅を見ます。

例えば成約率を低め・中くらい・高めの3通りで試算すると、期待粗利影響がどのくらいの範囲に収まるかがわかります。

ただしこれは暫定であり、最終的には過去の提案件数と成約件数から自社の実績値を割り出して置き換えることが前提です。

成約率・粗利率・稼働月数は会社ごとに大きく異なるため、他社の数字や一般論の数字を自社の確定値として使わないでください。

単価の平均ではなく中央値を使う理由は何ですか

平均は極端に高い単価や低い単価に引っ張られやすく、案件の中心的な水準からずれることがあるためです。

中央値は件数の真ん中に位置する値なので、外れ値の影響を受けにくく、典型的な案件の単価を表しやすくなります。

Dot Linkの集計でも、単価の正規化異常を除いたうえで中央値と分位点を併記しているのは、この幅を潰さずに扱うためです。

試算では中央値を基準に置きつつ、25・75パーセンタイルで高め・低めの試算も回すと、自社の実感と突き合わせやすくなります。

参照データ算出方法

本記事の月額単価の数値は、Dot Linkが受信した案件情報のレコード(種別がJOBのもの)を集計したものです。

集計期間は2026年3月17日〜8月21日、母数は25,668件です。

月額単価は、下限(unit_price_min)と上限(unit_price_max)の両方があれば中間値、片方だけならその値を採用し、正規化異常を除くため中間値10万円以上300万円以下を有効案件としています。

WITH jobs AS (
  SELECT
    CASE
      WHEN unit_price_min IS NOT NULL AND unit_price_max IS NOT NULL
        THEN DIV(unit_price_min + unit_price_max, 2)   -- 両方あれば中間値
      ELSE COALESCE(unit_price_min, unit_price_max)      -- 片方だけならその値
    END AS midpoint_price
  FROM `[案件データテーブル]`
  WHERE job_or_candidate = 'JOB'
    AND record_business_date_jst BETWEEN '2026-03-17' AND '2026-08-21'
),
valid_jobs AS (
  SELECT midpoint_price
  FROM jobs
  WHERE midpoint_price BETWEEN 100000 AND 3000000       -- 有効範囲 10万〜300万円
)
SELECT
  (SELECT COUNT(*) FROM jobs)        AS total_jobs,      -- 25,668
  (SELECT COUNT(*) FROM valid_jobs)  AS valid_jobs,      -- 22,507
  APPROX_QUANTILES(midpoint_price, 100)[OFFSET(25)] AS p25,  -- 600,000
  APPROX_QUANTILES(midpoint_price, 100)[OFFSET(50)] AS p50,  -- 725,000(中央値)
  APPROX_QUANTILES(midpoint_price, 100)[OFFSET(75)] AS p75,  -- 900,000
  APPROX_QUANTILES(midpoint_price, 100)[OFFSET(90)] AS p90   -- 1,050,000
FROM valid_jobs;

匿名化しているのはテーブル名([案件データテーブル])だけで、unit_price_minunit_price_maxjob_or_candidaterecord_business_date_jst は算出ロジックを再現できるよう実際のカラム名をそのまま記載しています。

複数案件メールの数値(48,601件中1,303件、2.7%、最大100件、5件以上437件)は、集計期間2026年3月17日〜7月21日の別集計であり、上記の単価集計とは母集団も期間も異なります。両者を掛け合わせて総損失額を算出することはできません。